1. 構想段階の相談は「ビジネスとして扱いにくい」

構想段階の相談には、次の特徴がある。

  • 仕様が固まっていない
  • 成約に直結するとは限らない
  • 工数がどれだけかかるか読めない

これは、従来のビジネスモデルと相性が悪い。

  • 成果報酬にしづらい
  • 月額課金の説明が難しい
  • 案件化しない可能性が高い

結果として、サービスとして成立させにくい領域として避けられやすい。


2. 「匿名相談」は信頼構築の常識と衝突する

日本の製造業における取引や相談は、基本的に

  • 顔が見える
  • 会社名が分かる
  • 関係性が前提

という文化の上に成り立っている。

一方、構想段階の相談では、

  • 社内でも未確定
  • 外部に知られたくない
  • 失敗したくない

といった理由から、匿名性が求められる

この匿名性は、従来の「信頼は関係性から生まれる」という前提と衝突しやすく、サービス設計の難易度を一気に上げている。


3. 複数相談は「比較」を前提にするため摩擦が大きい

複数のメーカーやSIerに同時に相談することは、理にかなっている。

しかし実務の現場では、

  • 一斉に声をかけることへの心理的抵抗
  • 「相見積もり」と混同されやすい
  • 先方の工数負担への遠慮

といった摩擦が生じやすい。

結果として、

  • 個別相談が常態化する
  • 比較検討が表に出てこない

という状態が続いてきた。


4. 公的支援・既存マッチングではカバーしきれない理由

公的支援や既存のマッチングサービスは、多くの場合、

  • テーマが明確
  • 条件が整理されている
  • 成果が測りやすい

案件を前提としている。

一方、構想段階の相談は、

  • テーマが抽象的
  • 判断軸が流動的
  • 成果が短期で見えにくい

ため、制度設計上も拾いにくい。

これは努力不足ではなく、設計思想の違いによるものだ。


5. 「需要がない」のではなく「前提が合っていない」

構想段階・匿名・複数相談という条件が満たされてこなかった理由は、需要がないからではない。

  • 現場には確かに困りごとがある
  • 早く相談したいという声もある

ただし、

  • ビジネスモデル
  • 信頼構築の前提
  • 文化的な慣習

これらが噛み合っていなかった。

結果として、この領域は長らく明確な置き場所を持たないままになっていた。


6. まとめ

「構想段階・匿名・複数相談」という条件を同時に満たすサービスが少ないのは、偶然ではない。

  • ビジネスとして扱いにくい
  • 文化的な前提と衝突する
  • 制度設計とも相性が悪い

こうした制約が重なった結果である。

しかし、それは「不要な領域」という意味ではない。

むしろ、これまで前提として扱われてこなかっただけの領域だと言える。

構想段階というフェーズをどう扱うか。

そこに、設備導入の質を変える余地が残されている。